現代のストレス社会で増えているのが、過敏性腸症候群です。仕事や学校で緊張するとトイレに行きたくなって下痢したり、また出張などホテルに数日間泊まっていると便秘になったりすることを経験します。このようにもともとストレスと胃腸の間には密接な関係があります。消化器官である腸の動きは手足の筋肉のように自分の意思で動くのではなく、自律神経の働きにより制御されています。この自律神経がストレスにより影響を受け、脳を動かす平滑筋が痙攣したり逆に動かなくなったりするのが、過敏性腸症候群です。症状としては、下痢、便秘、腹痛、腹部膨満感、放屁などがあり、このような症状で、普段の生活に苦痛や不便を感じている人が、治療の対象になります。わが国では、成人の15〜20%に過敏性腸症候群が見られ、女性の頻度が高いことがわかっています。また、男性は下痢症状が強く、女性は便秘症状強い傾向があります。
診断基準は、
(1)腹痛、腹部不快感あるいは腹部膨満感がある。
(2)便通異常(下痢、便秘あるいは下痢と便秘が交替しておこる)がある。
(1)と(2)の症状が1ヶ月以上続き、繰り返す。また、過敏性腸症候群の診断は他に大腸癌や腫瘍性大腸炎などの腹痛や便通異常をきたし病気がないことを確認することが原則となります。腹痛が続いたり、便に血が混じったりした場合は、大腸の内視鏡検査が必要となります。また、ストレスに対する反応が強い場合は心療内科や精神科の医師の診察も必要となることがあります。下痢や便秘の症状は薬をうまく服用することで、改善できます。ポリカルボフィルカルシウムという薬は、便の水分量と調節する働きがあり、下痢にも便秘にも効果があります。腹痛に対しては、セレキノンなどの鎮痙剤も有効です。
現代のストレス社会の中で、過敏性腸症候群が病気として認知されてきており、治療も可能になってきています。便通異常や繰り返す腹痛で悩んでいた方は、まず消化器の専門医の診察をうけるとよいと思います。